6.二日目⑤

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何か言わなきゃいけないと思いながらも何も言えない僕はまたスマートフォンを手に取って画面を開いた。母さんももう何も言わなかった。    翌朝、出勤前の父さんがリビングに入って来た僕の顔を見るなり、苦虫を噛み潰したような顔をして言った。 「彗太、今回のテストの結果はひどいものだったそうじゃないか。こんな学校で落ちこぼれているなんて、お前は一体何をやっているんだ」  何かを言われるのは覚悟していたけれど起き抜けに言われたのもあってむっとしてしまった。だから父さんのことを無視して、ダイニングテーブルに座り朝食を食べ始める。  その態度に腹を立てたのか、父さんは読んでいた新聞をぐしゃりと握り潰す。 「ちゃんと聞いているのか! スカイなんとかと言うくだらないSNSにうつつをぬかしているそうじゃないか。そんなものすぐにやめろ!」 「あなた、それは今回は目を瞑るって約束したじゃないですか……」 「うるさい、お前は黙ってろ!」  頭ごなしにスカリムを否定されたことや、今日から勉強をし直そうと思っていたのに注意されたのは腹立たしい。でもそれ以上に母さんを怒鳴りつけるのが許せなかった。  僕は父さんを睨み付けると、「父さんには関係ないだろ!」とだけ言い、食べ途中のまま家を飛び出す。  父さんは大学病院の心臓血管外科教授でいつも忙しい。ほとんど家にいないし僕と顔を合わせることなんて滅多になくて、僕は父さんと言う人間をあまり良く知らない。大体家にいたって決まって不機嫌そうな顔をしていて、話すと喧嘩ばかりだ。  昔は寂しいと思ったこともあったけれど、いまさら知りたいと思わないし、父さんだって僕に知って貰おうという努力をするつもりもない。だから僕はいつも思う、父さんに僕の何がわかるんだと。  その日から僕と父さんは以前にまして会話をしなくなった。顔を合わせてもどちらかが部屋からすっと出ていく。母さんはそんな僕と父さんを辛そうな顔をしていつも見ていた。  
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