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頭に触れた手がとても温かく感じられ、もっとそうしていて欲しいと思った。でも、母さんの顔色を見ているとそうとも言っていられない。
「もういいよ。母さん、おやすみ」
「おやすみなさい」
僕は寝室へと歩いて行く母さんを見送った。本当はもう少し傍にいたかったと思ったなんて言ったら、紗名にマザコンだって笑われるだろうか。そんなことを考えながら。
でも、これが母さんと交わした最後の会話だった。
もし最後になると知っていたら、僕はどうしていたんだろうと時々考えるけれど、ずっと答えは出ないままだ。
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