6.二日目⑤

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*  朝、いつものようにリビングに降りていくと、いつもなら忙しそうに家事をしている母さんの姿はなかった。父さんも帰ってきてはいないようだし、無理せずに眠っているなら良かったけれど、どんなに具合が悪くても朝食を作ろうとする母さんが起きていないということはきっとまだ具合が悪いんだろう。  早く病院に連れて行った方が良さそうだ。僕がついていくか、父さんを呼び出すか……とりあえず一度起こそう。  様子を見ようと寝室へと歩きながら「母さん?」と声を掛ける。  呼びかけた声に返事はない。 「まだ眠っているの? 一度病院行こうか。僕がついていくよ」  そう言いながら寝室を覗きこんだ僕の目に飛び込んできたのは、ベッドの横に倒れる母さんの姿だった。 「母さん!」  首に触れるとわずかに脈を感じるけれど、呼びかけても返事はなく意識がないようだ。  僕は混乱する頭でスマートフォンを取り出し救急車を呼ぼうとした。でも、何番だったのかどうしても思いだせない。  咄嗟に掛けたのは紗名の番号だった。自分でもしどろもどろで何を言っているのかわからなかったけれど、すぐに隣の家から紗名が飛んできた。  
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