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だから、武田くんから想いを打ち明けられた時、私は本当に嬉しかった。
私を頼ってくれた武田くん、海ちゃんのよさを共感出来る者同志のような一体感。
私は必死に武田くんの良さを海ちゃんにアピールしまくった。
初めは素っ気なかった海ちゃんが、ようやく靡いて2人きりで帰る事が増えていった。
その辺りからだったかな。
嬉しいのに、私は寂しくなった。
ひとりぼっちを自分で選んだのに、海ちゃんしか居なかったら自分が情けなくて涙が出そうになる事もあった。
ほとんどが中等部からの持ち上がりだったので、すでに人間関係はほぼ固定されていて、イス取りゲームの如くすでに時遅し、だった。
海ちゃんみたいにクールに決めようと思っても、しょせん後付けキャラは金メッキ。
そんな時に私は本城くんと同じクラスになって前後の席になったのだ。
本城くんは朝と夜、必ずLINEで挨拶を送ってくれた。
それはしょうもないスタンプだったり、自分の変顔だったり、およそ色気のないやり取りだったけど、その自然な感じが私の寂しさを紛らわせてくれていた。
でも、私はそれさえも穿ってみてしまう。
きっと大勢の中のひとりなんだ、私は。
これを本気になんかしたら、あとで痛い目にあうんだ、きっと。
だから、半分は返信して残りは放置した。
今朝の返信はまだしていない。
私は食べ終えたお弁当を片しながらスマホを開いた。
1件の未読メッセージ。
本城くんだった。
あの後また入れたんだ。
スライドしようとして一旦躊躇する。
返信がない事を責めるような内容だったらと怯える。
それさえもスルーすればいいじゃん。
でも、もっと重たかったら…。
いろいろ考えあぐねて、結局、もうスマホに触れられなくなる昼休みになってしまって暇を持て余した。
渡り廊下をわたって、東棟へ行く。そこからすぐの階段を下りて中庭に出る。
隅っこの空いてるペンキの剥げた白いベンチに腰かけた。
ここに居なければ、海ちゃんたちはきっと屋上のテラスかな。
私は図書館で借りていた文庫本を広げてみたけれど、それはもう本当に形だけで、活字を追う事さえ出来なかった。
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