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「さあ、お楽しみはココまでだ。
この後はきっと大変だぞ。
お前の父親は承諾してくれたが、
許婚の爺さんが厄介そうなんだ」
え、ええっ?!
いつの間にそんな情報を?
奥成家からこのホテルまで、
私たちずっと一緒だったよね??
ナカダ氏は私の思考が読めるのか、
サラリとこう言った。
「俺の警護担当は優秀だからな。
さっきエレベーターで背後から
必要な情報だけを耳打ちして行ったんだ」
い、いつの間に??
…続けてナカダ氏は説明を始めた。
成田家に住込みで働いている
20代の若い家政婦が、
実は許婚殿のお手付きで。
何もかも逐一報告しており、
今回の破談の件もいち早く伝え済みだと。
そのせいで既に許婚殿とその祖父が
父の元にやって来ているそうだ。
「あそこの爺さんはエゲツないからなあ。
肝を据えて立ち向かわないと、
簡単に足をすくわれる」
「だ、大丈夫なの?」
まるで騎士みたく跪き、
私の右手の甲に口づけながら
ナカダ氏は答える。
「…誰に訊いてんだ?その質問。
この俺が、負けるワケないだろ。
エゲツなさはこっちの方が上だから。
自慢じゃねえがな、拷問、誘拐、略取、
ひと通り経験済みだっつうの。
あんな甘チャンの許婚には、
絶対に負けないから、安心してろ」
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