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「考えたくないが、ありえるな」
友の政策を邪推するのは気が引けるが、可能性としては排除できない。
「事故死がか?」
リックがからかうような口調で放つ。
「暗殺のほうだよ」
俺はすかさず否定する。
「そんときは、俺たち政治部の出番だ。ウェインのことを探るのは気が引けるがしょうがない。これが仕事だからな」
苦々しい口調でリックが話す。真実を探し求めることが俺たちの仕事だ。そこに私情は挟めない。
「――あいつ、鉄仮面でも被ってるのかっつーぐらい表情が変わんねえよな。昔はもっと明るい奴だったのに」
確かに。軍にいるときのウェインはムードメーカーのような存在だった。
「やっぱさ、一定の地位とか莫大な富とか、大きな力を得ると、人って変わるのかねえ」
「……」
思わず言い淀んでしまった。
「……悪い」
「いや、いいんだ。結局、使う側の考え方次第ってところだろうな」
さきほどの発言以降、リックは昼まで話しかけてこなかった。彼なりの気遣いなのだろうが、彼の性格から考えれば、むしろあからさまに話題を変えて話し続けてくれたほうがありがたかった。
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