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「おい!」
昼飯を食べ終え、ウトウトとしていた時。不意にリックに大きな声で話しかけられ、俺は思わず肩が上がった。
「どうした?」
「いいから早く来い!」
リックに先導され、俺は編集部内のテレビが置かれた広い休憩スペースにやってきた。
「俺はそんなに疲れてないぞ?」
「そうじゃねえって。テレビだよ。テレビ」
そう言われてテレビを見ると――。
「この映像に映ってる奴って、お前んとこの部隊にいた隊員だよな?」
心臓が早鐘を打つ。
『政府は先ほど、国内で深刻になっている反政府デモについての続報を発表。現在デモが発生している州の中で、とくに深刻なのは四つで、そのいずれにも軍属の人間が関与しているとのことです――』
たくさんの人々の先頭に立っている長髪の男は、俺が決して忘れるはずもない相手だった。記憶の奥底に眠っていた血と鉄の光景が引っ張り出されてくる。悪夢の光景が次々と頭の中に浮かんでは消え、子供がおもちゃを欲しがるように、必死で手を伸ばして助けを求める者たちの怨嗟が頭を駆け巡る。俺は悪夢の当事者。事実は、未来永劫消えることはない。この両手は、今も十年前の血に塗れているのだ。
「おい、大丈夫かよ?」リックが心底心配そうな顔で訪ねてくる。
「問題ない。ちょっと昔のことを思い出してただけ――」
「ロイ! お前さん宛に伝言だ」
カイさんが小走りでこちらに近づいてきながら話す。嫌な予感がする。
「伝言? 誰からですか?」
「ジェラルドという男からだ。緊急の要件で、日曜日に家に来てほしいと」
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