第一部 五

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「俺が任務に出た後なんだが――」 「わかってる。お前の家は、定期的に様子を見に行くさ。シオンが仕事に行けばレアールはひとりだしな」 「ありがとう」 「シオンはこの先どうするんだろうな?」 「きっといい相手が見つかるさ。包容力があって優しくて、それでいて気が強い。きっと引く手数多だろう。お前が娶めとってくれりゃいいんだが」 「馬鹿言うな。俺に浮気しろってのか」 「冗談だって」 「んじゃあ、これでお開きだな」 「……ああ」  俺はリックと握手を交わす。これまでで一番、力のこもった握手だった。 「じゃあな、地獄で会おう」 「ああ」  俺たちはそれぞれ逆の方向を歩いて帰る。さらばだ、友よ。 「ロイ!」  不意に大声で名前を呼ばれて振り返る。リックがこちらを向いて立っている。 「!」  敬礼だ。あいつの怠惰な性格からは想像もできないほどにしっかりと手が伸びている。未来の死者に対する敬礼は“右腕”だった。俺も精一杯の力を込めて右腕で敬礼をし返す。目を輝かせ、イーリスの未来のために尽くすと決意した入隊式の日のように。  ほんの数秒だったが、それで十分だった。俺たちは再び踵を返して歩き始める。  
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