第一部 六

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「お前の標的は、ラーヴィ、ルヴィア、ヴィクス、デイヴだ。それぞれ自分の故郷に戻っているから、四つの州に向かうことになるな」  移動する時間を考えると、四人の住んでいる州がそれぞれつながっているのは救いだった。カニアから北西に四十キロメートルほど向かうと、ラーヴィがいるクルス州がある。そこからまた北西へ向かえば、ルヴィアのいるカスラ州、ヴィクスのいるフスレ州、デイヴのいるラスペン州に行ける。だが、カスラ州とヴィクス州のあいだには険しい山脈が連なっており、ヴィクス州に行くには鉄道を使う。車なら、一度西へ大回りしなくてはならない。 「けっこうな騒ぎになってるみたいだが、今回の動乱による世論への影響は?」 「いまのところは、治安の不安定さに対する懸念ぐらいで、とくに大きな変化はない。お前たちの存在は、あの戦場に赴いた者しか知らん。素性ともなればほんの一握り。テレビに映ったところで、<五つ子>だと判別できる人間は皆無に等しいだろう。まあ、だからと言って目立ちたがるのは論外だが」  とはいえ、情報は油断しているとすぐ漏れるもの。この状態が長続きするとは思えない。 「移動手段は?」 「車を用意してある。まだまだ発展途上だが、軍用の最新型だ。整備されていない道もかんたんに進めるだろう。そうそう、それぞれの州に入ったときと、標的を仕留めたときに、無線で連絡してくれ。ウェントと上層部に報告しなければならなくてな。連絡をよこす場所は、とくに指定はないが、できるだけ軍施設のを使ってくれ」 「任務の期間は?」 「一ヵ月半。平和条約締結直前までがタイムリミットだ。」 「……四人を殺し終えたら、俺はどうすればいい?」  聞きたくないが、自分にとって一番重要な情報だ。 「カニアへ戻ってきてくれ。渡すものがある」 「渡すもの?」  四人を殺し終えた時点で自分には死しか待っていないというのに、プレゼントとは驚きだ。 「まだ内容は明かせん。が、悪いものではない」 「……そうか。作戦決行日は?」  相手は<五つ子>だ。各地の関係者施設を利用できるとはいえ、丸腰で現地に向かうのは避けたい。
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