第一部 八

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「君は誠実な人間だ。きっと、貴族という身分を明かしたとしても、変わらず周囲から好かれていただろうな」  秘密を打ち明けてくれた彼女に、せめてものフォローをする。効果があるかどうかはわからないが。 「作戦への参加は、ほとんど決まっていたようなものでした。ここで拒否しては、きっと家での生活がさらに苦しくなると。そうなるくらいなら、せめてアデライード家の者らしく、軍人としての責務を全うして死にたい。ですから、私はあくまでも、自分の意志でこの作戦に加わることを決めました」  高潔な性格だ。皮肉かもしれないが、セレーヌの周囲を取り巻いていた過酷な環境こそが、今の彼女の精神を生んだのだろう。 「今回の作戦で、君には嫌でも役に立ってもらうことになる。君の助けが必要だ」 「……はい!」  俺の言葉を聞いて、セレーヌは満面の笑みで答える。ドロドロとした家庭内事情がうかがえる貴族の中で、よくもこんなにも純粋に、真っ直ぐに育ったものだ。 「ともあれ、話してくれてありがとう。今度は俺のことを話さなければな」 「その必要はありませんよ」  彼女が心の内をさらけ出してくれたことのお礼に、俺も過去のことを話そうとしたが、その返答は意外だった。 「ロイさんのことは、事前に調べさせていただきました。だいたいのことは把握済みです」 「機密情報の塊である俺のことを知り尽くしていると?」 「もちろんです」  得意げな口調で同意する彼女だが、正直信ぴょう性は低い。俺の過去を知っている人物は本当にごくわずかなのだ。資料も必要最低限の物しかないし、セレーヌが作戦のことを聞いてから情報収集をし出したことを考えれば、期間は三日。とてもじゃないが、有益な情報が手に入るとは思えない。 「では、ご教授を。ロイ・トルステンとは、いったいどういう奴なんだ?」
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