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セレーヌは大きめに息を吸い込むと、ロイ・トルステンの紹介を始めた。
「年齢は三十歳で、最終階級は少佐。十五歳のときにイーリス士官学校に入学し、科目の成績は真ん中ほどですが、実戦形式の訓練はつねに最上位をキープしていました。三年の時を経て学校を卒業後、イーリス軍の正式な兵士となった年に“革命戦争”が勃発。ロイさんは訓練の正式が飛び抜けて良かったことから、少尉の階級を与えられ、部隊を指揮していきます。最初は異例の待遇に不満を漏らす者が多かったものの、実力と結果によって徐々に支持を獲得。地方の局地戦などでは順調に戦績をあげますが、ガリムの機械化部隊が投入された重要な戦いでは、戦車の圧倒的な性能の前に手も足も出ませんでした――」
「イーリスが窮地に立たされていたところ、ヨハネス・ジェラルド博士が、銃と戦車の生産と並行して、超人的な身体能力を持った人間を生み出す、”ニムロデの子供たち《五つ子》”計画を実行に移します。当時博士の孤児院で生まれ育った、ロイさんを始めとする五名の若い兵士が強制的に実験台とされ、途方もない資金と努力の末、見事計画は成功を収めます」
一息ついて彼女は話し続ける。
「戦車の数が四百輌を超えたころには、≪五つ子≫の調整も完了し、すでに実戦投入のタイミングを待っていました。ガリムに与える衝撃は、大きければ大きいほどいいという軍上層部の判断で、≪五つ子≫とイーリスの機械化部隊は、同じタイミングで初陣を飾ります。その初陣を飾った戦いが、革命戦争中最大規模の戦いとなった“ミディレルの戦い”。イーリスとガリム双方合わせて五百輌以上の戦車、八十万人の兵士が投入されたこの戦いで、≪五つ子≫は獅子奮迅の活躍を見せ、戦いはイーリス側が勝利しました。その後、機械化部隊の普及や、≪五つ子≫の活躍を目の当たりした兵士たちは奮起し、士気も爆発的に向上します。ここから戦局は一転してイーリス側に傾き、その勢いのまま、戦線を国境まで押し戻すことに成功しました」
綿密に調べているからか、情報量が多く、まるで歴史の授業でも受けているかのようだった。
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