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外車専門ディーラーのトップセールスマンが昇進の名の下にここに引っ越してきたのは三ヶ月前。
内示が出た後、独り者の気軽さで少ない荷物を社用車に積みこんで社宅がわりのアパートにやってきた。
車と2階の角部屋。三往復もすれば荷物の持ち込みは終わる。後はスーツを持ち込むだけ、と車に戻り、改めて周りを見渡す。
郊外の静かな住宅地だ。
道を挟んでブロック積みの門扉の向こうにコンクリート造りの家が見える。
築30年以上というところか。
手入れをしている風もない。
珍しい。亮介は首を傾げた。こういう家にしては車がない。
老夫婦が住んでいるのか。
まだ見ぬ住人の姿を想像しながら荷物を手に取った。
ガチャリとドアの開く音がした。
予想と外れ、出てきたのは髪の長い女だった。
前髪も纏めて後ろで一つ結びをしている。派手な顔立ちだが化粧はしていない。歳のころは30前後というところ。
古風な木綿のワンピースが黒髪を際立たせている。
女が俯きがちに門扉を出てくる。
目を離せないでいる内、彼女が亮介を見た。
軽く会釈をすると彼女も返してきた。
そのまま駅に向かって歩く彼女を見送り、亮介は残りの荷物を持って部屋に上がった。
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