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 紙パックを傾け、喉の奥に勢いよく甘い液体を流し込んでいく。だけど、こんな物じゃ渇きは潤すことができない。 「……やっぱ、美味しくない」  最後の一滴を飲み込み、空になった紙パックは乱暴にゴミ箱へと投げ捨てる。五百ミリリットルという大量な液体を流し込みながらも満足感を得られない身体は、その不満を盛大なため息として吐き出す。 「はぁ~。もう、三年も血を飲んでないんだよな」  僕は俗に言う吸血鬼。けど、太陽も十字架も苦手ではない。普通に高校にも通っている。僕が吸血鬼ということは、もちろん両親も吸血鬼。両親も人間に混じり、人間と同じ生活をして、社会に出ている。  ただ、両親は吸血鬼らしく、人間の血を食事として摂取している。数週間ごとではあるが、夜の闇に紛れ人間の首筋に牙をたて流れる熱い血を食事として称し、身体の内に取り込んでいる。僕も、数年前までは両親に習い人間の血を飲んでいた。  ……だけど、今の僕はその行為を拒んでいた。
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