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リビングのカーテンを開け、窓の向こうの空を見れば、今にも雨が落ちてきそうな梅雨空だった。
昨夜の天気予報はハズレじゃなかったらしい。僕は思わずため息をついた。
「おはよう、パパ」
その声は背後から。慌てて振り返った僕の目に、娘の美結(みゆう)の姿が映った。
起きがけの美結はまだ眠そう。今にもあくびをしそうなその様子がたまらなく可愛くて、僕の顔は自然とほころんだ。
「おはよう。それから、誕生日おめでとう」
今日は美結の誕生日。今日で十歳だ。
美結は眠そうだった顔を笑顔に変え、「ありがとう、パパ」と言った。
「さ、顔を洗って着替えておいで。朝ご飯にするから」
パジャマ姿の美結は「はーい」と返事すると、踵を返して洗面所に向かう。
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