彼女の話

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 次に向かったのは、電車で2駅先にあるテーマパークだ。絶叫系アトラクションがお互いに好きだったので、休日に何度も行ったことがある。時刻は午前9時前だ。今日は平日だが、大勢の人が開演前から入場門で順番待ちをしている。 『次はアレに乗ろうよ。最近できたばかりなんだって』 『うつ伏せで乗るのか。そういうタイプは乗ったことがないな』 『鳥になった気分になれるんじゃない?』 『足が踏ん張れないっていうのは、少し違和感があるな』 『なあに、怖がっているの?』  オレは入場門から見えているアトラクションでの会話を思い出した。あの時、オレは少し怖かったのだ。絶叫系は好きだが、あくまでちゃんと安全が確保されているという点でだけだ。少しでも踏ん張れる場所がないと、落ちてしまいそうで怖かった。それが、彼女にはバレていたのだと思う。 ポーン  またメッセージが届いたことを知らせる音が鳴った。オレはスマホを見る。
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