1

3/3
前へ
/3ページ
次へ
 そして、あいつは覚悟を決めた。 「ごめんなさい。本当はあなたのことを学食の壁の陰で待っていました。最初は、偶然だったんです。でも、あいさつだけでもあなたと言葉を交わせるのがうれしくて……。前からずっと四條さんのことが気になっていました。よかったら……、俺と付き合ってください」」  あいつの言葉を聞いた途端、私の鼓動は一層はげしく打ちだした。あいつに気づかれないよう、できるだけ落ちついた声で返事をする。 「私でよければ、よろこんで。でも、言ったように嘘は一生に一つだけしか許さないわよ」 「嘘なんて、一つだってつきません」  あいつの誓いは本気のようだ。それなら……。   「さっきの話は気にしなくていいのよ。だって」  私はテーブルの上に身を乗り出し、あいつの耳元に唇を近付けた。そっとささやく。 「ほんとは、私はいい女じゃないの、嘘つきだし。でもよろしくね」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加