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そして、あいつは覚悟を決めた。
「ごめんなさい。本当はあなたのことを学食の壁の陰で待っていました。最初は、偶然だったんです。でも、あいさつだけでもあなたと言葉を交わせるのがうれしくて……。前からずっと四條さんのことが気になっていました。よかったら……、俺と付き合ってください」」
あいつの言葉を聞いた途端、私の鼓動は一層はげしく打ちだした。あいつに気づかれないよう、できるだけ落ちついた声で返事をする。
「私でよければ、よろこんで。でも、言ったように嘘は一生に一つだけしか許さないわよ」
「嘘なんて、一つだってつきません」
あいつの誓いは本気のようだ。それなら……。
「さっきの話は気にしなくていいのよ。だって」
私はテーブルの上に身を乗り出し、あいつの耳元に唇を近付けた。そっとささやく。
「ほんとは、私はいい女じゃないの、嘘つきだし。でもよろしくね」
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