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 電球色の映える薄暗い店内。  密やかで安穏としている筈なのに、どことなく、外界から切り離された異空間っぽい妖しげな印象を、外から店内を覗いた者に抱かせる。  日常とは少しかけ離れた、特別な空間。  その不可思議な雰囲気のせいだろうか。客はリラックスした様子でありながらも、どこか気取り気味に一定の緊張感を保って過ごしているようにも見える。  ――このひと時だけは、外の喧騒から離れ、静かに過ごしたい。  ――肩の力を抜いて、今はただ、コーヒーの味と香りを楽しもう。  店内にいる客のそれぞれが、そんな類の思いを抱いているのかもしれない。 (喫茶店にいる人って、いかにも"オトナ"って感じで、格好いいな)  お店の窓越しに大人の世界を垣間見た気がして、喫茶店への関心が高まる。  だが、窓硝子にうっすらと映る自分の姿を見て、入店の意欲が失せた。 (このお店にいる人達からすると、高校生なんて、まだまだ子供としか思えないんだろうな。私がここで過ごすのは、場違いもいいトコロだよね)  おもむろに、高校の制服を纏った自分の体を見下ろす。  今後の成長に合わせて誂えた制服は、体に対してやや余り気味で、不格好なことは否めない。  どんなに背伸びをして大人ぶったとしても、こんな姿な上に、垢抜けない自分ではこのお店に馴染めるわけがないのだ。  そういう訳で、喫茶店に入るのは、自分が大人になったと思えるようになるまでは諦めることにした。  ……とは言え、喫茶店が気になることには変わりない。  その日以降、お店の前を通り掛かる度に、窓の向こうに広がる光景を窺う習慣ができたのだった。
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