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(あ、先生発見)
窓辺のひだまりの席に目当ての人を見つけて、真っ直ぐにそちらへと向かう。
席にいるのは、見た目二十代前半の、整った顔立ちの男性。
方々に跳ねる若干長めの黒髪に、服装は黒のハイネックシャツにダークグレーのカーディガンと綿パンと、全体的にラフな出で立ちだ。
今は腕組みをしてやや頭を垂れた体勢で座り、瞑目している。
(先生、随分とリラックスしてる。もしかして、今日はお休みだったのかな)
温かな日差しを一身に受ける、実に気持ち良さそうな姿に、つい、日向ぼっこをする猫を連想してしまう。
この、猫みたいな人が私の先生。
かれこれ半年ほど、勉強を教わっている。
先程は『日向ぼっこをする猫』なんて可愛らしく表したものの、こんなのんびりとした姿を見るのは今日が初めてだ。
私がよく見る彼は、大抵いつも家庭教師モードなので、服装はボタンシャツに暗い色のニットベストと綿パンツと地味で、学校の厳格な先生を彷彿とさせる黒縁眼鏡を掛け、髪も七三分け。態度も冷徹で隙がない。
それだけに、今は普段窺う先生の姿に比べると随分と若く、気安い印象を受けた。
(こんな居心地のいい所にいたら、そりゃあ、気も和らぐよね)
コーヒーの香りが漂う店内。
BGMに洋楽が流れているが、あまり煩くは感じない。
窓辺はぽかぽかと暖かく、午後のひと時を安穏と過ごすには絶好の環境だ。
大人達が喫茶店に来たがるワケだ、と思わず納得した。
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