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眼差されるもの
研究所にはいくつかの図書室がある。一番広いのは、地下一階から三階までを使った広大な図書室だ。蔵書の保管のために空調は一定に保たれ、検索装置や管理機能が充実している。
俺はそこよりも、各階のところどころにちょこんとある小さな図書室を利用するほうが多かった。イメージとしては前者が大手大学の図書館で、後者は小学校や公民館の一室にある図書室だろうか。
夏の日、裏庭に面した二階の図書室に行った。汗ばむ陽気だったが、空調は起動しておらず、開け放たれた窓から時折吹き込む風が気持ちよかった。
司書不在の部屋で、他にひと気もなかった。大きなテーブルの中央で開放感を味わいながら、ソトで約一年前に発行された雑誌を読むともなしに眺めていた。気温のせいか寝不足のせいか、軽い眠気を覚える。
思わずぼうっとしていると、視界の隅に人影が入り、それがテーブルの上にドサッと何かを置いた。
目をやると、たまちゃんがいた。座ってこちらを見ている。本も荷物も何も持っていない。
置いた、と思ったのは、彼女の大きな胸だった。前かがみに頬杖をついた腕の内側で、Tシャツを被った二つの小玉スイカがテーブルの上にしっかり載っている。
「置いてる」
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