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そうして放送は終わった。周りの客席がざわつく。私の心臓の音もいつも異常に速くなっている。
「なんか大変ですね」
春花は私に不満そうな顔でそう言ってくる。
「そうだね」
「ねぇ、ゆうくん。もし……もしも私が危険になったら助けてくれる?」
「うん」
「ゆうくんが死んでも助けてくれる?」
私は一瞬周りのざわめきを何も聞こえなくなった。そして一呼吸して素直に答える。
「ごめん、今は答えられない。でも全力で対処するから安心して」
私の声は震えてた。震える声になぜかムカついた。安心してと言ってるのに不安を与えているだけじゃないかと思って。
しかし彼女はこう答えた。
「ありがとう」
なんかムカついた思いが綺麗に取れた。まるで家の隅っこに溜まっていたホコリが掃除機によって吸い取られ綺麗になくなるかのように。
「そうそう。ゆうくん、今何やってるの?私は大学出てゲーム制作会社で働いてるんだー。まだまだ新人だけどね」
「俺も大学出てサラリーマンしてる。同じく新人なんだけどね」
私たちはこんな感じで他愛のないことを話した。話していると彼女は私と同じく自分と同じほど魅力のある男性に会わないまま現在に至るようだ。彼女は中学も高校もバトミントン部で、私は硬式テニス部だった。
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