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いきなり人の家に上がるのは気が引けて、僕は断ろうと思った。
「いや……男なんで、これくらい別に……」
「まぁ、若い人が遠慮なんかしないで。
実は今、うちの娘に頼まれて、近所で有名なケーキを買って帰る所だったの。
お詫びにもならないけど、ぜひうちに寄って一緒に召し上がっていらして」
「……でも…」
「それに、うちの娘もこの春、あなたと同じ大学に入ったのよ。
せっかくだから、お友達になってあげて」
「……はぁ…」
僕は女性の強引さに負けた。
ちなみに僕は甘党であり、おまけに同級生の女の子と知り合いになれるかも、とは思ったが、決してそれが理由じゃない。
公園を出て女性と歩きながら、実家はどこだとか、学部やサークルの事、女性は娘さんと二人暮らしだ、などといった話をした。
それから、歩いて5分くらいの所にある古いマンションについた。
3階まで階段を登り、一番奥の部屋の前に来た。
女性がドアの鍵をあけて、僕は促されるまま部屋に入る。
男兄弟ばかりが三人いる家に育った僕は、同年代の女の子の住む家に入るのは初めてだった。
どんな部屋なんだろうと、少し期待しながらドアの中に入ると、少しだけ何か嗅いだ事のない匂いがしていた。
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