三代目

3/4
前へ
/4ページ
次へ
「ああ、この店にゃー、良い物があるって聞いたからよう」 「あったりめいよ……ここいらで、わしの店にかなうとこはあるもんか。  よし……これなんかどうだい?  三丁目のアイドル、スズちゃんの抜け毛で作ったスカーフだ」 「ほう、あのスズの……綺麗なトラ柄だ」 「あとは……二丁目のバー『キャサリン』の看板娘、  クロエの血を吸ったノミを繋げて作った首輪だ……パンパンに膨れてるぜぇ。  大玉で、テリもいい、赤い真珠と言っても過言じゃニャい」 「ほう、あのじゃじゃ馬……いや、じゃじゃ猫クロエの…珍しいじゃニャいか」 「まだあるぜ……トップモデル猫、ニャオミの小便香水、  永遠のマドンナ、木ノ実ニャニャのクソから出てきたコーヒー豆……  これは……ただのなめネコ免許か……他にもにゃー…」 「おやっさん……今日欲しいのは、俺のものじゃニャいんだ。  実は、今日は大切な人の誕生日でニャー……良い贈り物を探してんだ」 「へへ……にゃんだい……相手は女かよ……三代目も隅におけニャい……  じゃあ……とっておきのを出してやるよ…」 オヤジは、店の奥に引っ込み、大きな黒い袋をくわえて戻って来た。 そして、袋を少しだけ開き、中身を男に見せた。 「!?おい……こりゃ、伝説の……」 「ああ……特チュー品だ。  外来品だからな、この『野良猫商店』じゃニャきゃ、手には入んニャい代物だ。  あと、お代は要らニャいぜ」 「いいのか?」 「ああ、持ってきニャ。  三代目は、まだ若いんだろ?」 「ああ、生後8ヶ月だ」 「じゃあ、教えといてやるよ。  良い女ってのは、物じゃ釣れない……  最高の時間をプレゼントしてやるのが、一番喜ぶんだ」 「なるほどにゃ……こいつは喜びそうだ……あんがとよ、おやっさん」 男は、店に尻を向けて、去っていく。 「三代目、野暮かもしれんが教えてくれ、あんたのハートに爪を立てた女ってのは、どこの誰にゃんだい?」 「……三丁目の木下さんちの絢香ちゃんだ。  まだ中学生なんだが、俺みたいな野良猫を可愛いがって、離さないんだよ。  おやっさん、俺もどうやら家猫になっちまいそうだ。  おっと、もうパーテイーが始まってる時間だ!  おやっさん!じゃーニャ!」 男は、袋をくわえ、尻尾を振りながら野良猫商店を出て行った。   「にゃんだ……人間かよ……」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加