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「ああ、この店にゃー、良い物があるって聞いたからよう」
「あったりめいよ……ここいらで、わしの店にかなうとこはあるもんか。
よし……これなんかどうだい?
三丁目のアイドル、スズちゃんの抜け毛で作ったスカーフだ」
「ほう、あのスズの……綺麗なトラ柄だ」
「あとは……二丁目のバー『キャサリン』の看板娘、
クロエの血を吸ったノミを繋げて作った首輪だ……パンパンに膨れてるぜぇ。
大玉で、テリもいい、赤い真珠と言っても過言じゃニャい」
「ほう、あのじゃじゃ馬……いや、じゃじゃ猫クロエの…珍しいじゃニャいか」
「まだあるぜ……トップモデル猫、ニャオミの小便香水、
永遠のマドンナ、木ノ実ニャニャのクソから出てきたコーヒー豆……
これは……ただのなめネコ免許か……他にもにゃー…」
「おやっさん……今日欲しいのは、俺のものじゃニャいんだ。
実は、今日は大切な人の誕生日でニャー……良い贈り物を探してんだ」
「へへ……にゃんだい……相手は女かよ……三代目も隅におけニャい……
じゃあ……とっておきのを出してやるよ…」
オヤジは、店の奥に引っ込み、大きな黒い袋をくわえて戻って来た。
そして、袋を少しだけ開き、中身を男に見せた。
「!?おい……こりゃ、伝説の……」
「ああ……特チュー品だ。
外来品だからな、この『野良猫商店』じゃニャきゃ、手には入んニャい代物だ。
あと、お代は要らニャいぜ」
「いいのか?」
「ああ、持ってきニャ。
三代目は、まだ若いんだろ?」
「ああ、生後8ヶ月だ」
「じゃあ、教えといてやるよ。
良い女ってのは、物じゃ釣れない……
最高の時間をプレゼントしてやるのが、一番喜ぶんだ」
「なるほどにゃ……こいつは喜びそうだ……あんがとよ、おやっさん」
男は、店に尻を向けて、去っていく。
「三代目、野暮かもしれんが教えてくれ、あんたのハートに爪を立てた女ってのは、どこの誰にゃんだい?」
「……三丁目の木下さんちの絢香ちゃんだ。
まだ中学生なんだが、俺みたいな野良猫を可愛いがって、離さないんだよ。
おやっさん、俺もどうやら家猫になっちまいそうだ。
おっと、もうパーテイーが始まってる時間だ!
おやっさん!じゃーニャ!」
男は、袋をくわえ、尻尾を振りながら野良猫商店を出て行った。
「にゃんだ……人間かよ……」
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