覚えてる?

3/8
前へ
/8ページ
次へ
「あのさ……ハァ……ハァ……君、  スーパーの向かいにある公園……覚えてる?」 「公園?  覚えてるって……当たり前でしょ?  私は、いつもそのスーパーで買い物してるんだから」 「いや、そうじゃなくって!  ちょっといいから……ちゃんと座って話そう」 彼はそう言うと、無理やりキッチンから私を引っぱって、リビングのソファーに座らせる。 「そうじゃなくってさ……今、その公園でね、  小学一年生くらいの女の子が、一人で泣いてたんだ」 「うん」 「でね、どうしたのかなぁって思って……。  でもね、すぐに声をかけられなくてさぁ。  だってほら、今、子供に声をかけたら、  すぐに不審者扱いされたりするからさぁ」 「そうだねぇ、あなたも見ようによっては…怪しいし…」 「もう、それはいいんだって。  それでさぁ、周りを見ても親もいないっぽいし、  どうしようかなぁって悩んでたんだけど……  ほら、今日は俺の誕生日だしさぁ、そんな日に、  泣いている子がいるってのは、  悲しいなって思ってさぁ……」 「結局、声をかけたんでしょ?」 「うん」 彼は、こういう人だ。 困っている人を無視できずに、 いつも自分から、貧乏くじを引いてし まうような人。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加