第一章 冒頭 2011年その一

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俺「ちょ、ちょっと待ってください! そんなゲームやアニメじゃないんですよ!?黄泉比良坂を開くなんて「違う」え?」 加納さん「開くのはあくまでも黄泉比良坂ではなく、あの世へ至る道だ。 神が塞いだ道を人間ごときが開けれるわけがない」 そこでタバコに火を付け、ゆっくりと加納さん話始めた。 この資料は、前述した祓い屋から渡されたもの。 内容は黄泉路、あの世への道を開くための計画。その関連情報だという。 加納さん「一枚目、二枚目の資料に記載された企業ははその計画に欠かせない工事を行う企業だ。 その二社の上層部には黄泉路を開こうとする連中の息がかかっていて、工事完成の暁には霊が寄り付かない『清浄な場』が出来上がる」 例えば災害公営住宅を作る土地。 この場所に三枚目の資料の画像のように霊を追い払う何かを埋設する。若しくは土地自体が結界の役目を担うような作りにする。 工事関係者にすら知られることなく、このような処置を施そうとしているそうだ。 俺「でも、霊を追い払っているだけですよね?それで黄泉路なんて開けるものなんですか?」 そう、工事にしろ廃墟に落書きのようなものでお祓いをするにしろ結局は追い払っているだけで黄泉路なんて大仰なものが出来上がるとは思えないのだ。 加納さん「追い払うだけなら、さっき私はこう言ったな。追い払うだけではなく、追い払った霊を一点に集めようとしているなら? さあ、どうなると思う?」 まさか。 そんな方法。あるのか? 加納さん「出来るんだよ。今のこの状況なら。2、3年程度の間、期間限定ではあるが出来るだろうな。 まず震災によって何人死んだ? そして、それによって今この街を含めこの県、特に沿岸部に近い場所がとれほど『あっち』に近づいていると思う?」 18000人。 そして、加納さんも言っていたように震災後に増えだした幽霊騒ぎ。 科学的には人々が不安になって見えないものを幻覚として見た。 そう言ってしまえるのだろう。 でも、いるんだ。 幽霊は俺達の身近に。 俺はそのことを知っている。 加納さん「今回の仕事の内容を説明する」 気軽に、しかし俺には厳かに聞こえるその声で、 黄泉路を開くのを妨害、あわよくば阻止しろ。 そう言ったのだった。
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