断章 ある祓い屋と弟子の日常

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霊能力者というのは胡散臭いものだ。 いや、だって、ねえ? 俺には霊なんて見えないし、触れられないし、声も聞こえない。 稀に何かうめき声みたいのを聞くこともある。 けれどそれが霊のものだって確認できる能力なんて俺にはない。 友人にそういった能力を持つ者が二人いるがそいつらはハッキリと『見えるし、聞こえるけど触れないし祓えない』そう言う。 そいつらの言うことは信じることが出来た。 そもそもそいつらが俺にそんな嘘をつく奴らではないし、俺にそんな嘘をついてもメリットなんて無いからだ。 だが、最近俺は『見えるし聞こえるし祓える。相手次第では触れるかなー』と言う女の弟子になった。 霊能力者、祓い屋などと呼ばれる女の弟子に。 ことの成り行きは意外なところからだった。 街を歩いていた俺に声をかけてきた人がいた。 『携帯のメールってどうやって開くのか教えてくれない?』 唖然。 見た目は10代の俺と大差ない年頃の女の子からそんなことを聞かれればどこからつっこんでいいやら。 その場で軽く説明し、お目当てのメールを開いたところで足早に去ろうとしたが礼がしたいと言われ喫茶店で一杯お茶をごちそうになることに。 正直下心はあったんだ。それが間違いだった。 だが考えてほしい。 一週間前に彼女と別れ、一人身で暇をもてあまし、あてもなく街をぶらついていたらかわいい女の子に礼がしたいと言われた。 そりゃついていくだろう? たとえこの先に待ってるのが宗教やマルチの勧誘や壺や絵を買わされる未来かもしれないと思っても行ってみたくなるくらいには可愛い子だった。
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