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目を覚ましても、視界に移るのは見知らなぬ天井だ。寝る前と何ら変わりない状況に大きく溜息をつく。
無駄に広いこの家は洋風の造りをしていて、家具やら飾ってある絵やらはどれも高価な物に見えた。
洋画に出てくるような、お金持ち仕様の洋館といっても良い。
「……やっぱり夢じゃなかったか」
もう一度深く溜息を付く。
あの後、家の中を探索してみたものの、目ぼしいものは何も無く。
途方に暮れたままどうしたのかと言えば、……そのまま諦めて寝たのだ。
それはもう、ぐっすりと。
人間、ここまで追い詰められると神経が図太くなるらしい。
とはいえ、何時までも現実逃避をしているわけにもいかなかった。
「う、……」
きゅるるる、と間抜けな音が部屋に響く。
空腹。こればかりは、生理的なものでどうしようもない。
寝る前に、少し待てば家主が戻ってこないものかと淡い期待もしていたが、家の中は静まり返ったままだ。
いい加減現実を受け止めて、動かなくてはならないのだろう。
いそいそと起き上がって伸びをすると、再び洋館の中を歩き始める。
あれから日が暮れたのか、洋館の中は暗く、歩くのに少し心許なかった。
せめて灯があれば、そう思いはするものの、暗がりの廊下にそれらしき物を見つける事が出来ない。
そもそも、電気がついておらず、視界がわるいのだからそれも当然と言えば当然である。
「こう、スイッチって大体壁に付いてるものじゃない?」
試しに手探りでスイッチを探してみる××だが、その手つきはいい加減だった。
××も本気で見つかるとは思っておらず、単なる思い付きに過ぎないのだろう。
「まあ、そう簡単にあるわけ…………」
コツンと手に硬い感触が伝わる。
それは金属のように冷たく、何やら丸い形状をしているようだった。
(まさか、本当に……?そんな馬鹿な)
半信半疑のまま、とりあえずドアノブのように回してみる。
バチッと静電気のようなものが走って、数秒の間明滅した後洋館の中を照らす。
まさか本当に点くと思っていなかった××は、暫し呆然としてしまった。
そして改めて見る洋館の中は、ホコリが積もっていて生活の気配を感じられない。
前に住んでいた住人が家を出て、かなり経っているのかもしれない。
人が住んでいないと考えた方が自然だった。
「朝はちゃんと見れなかったからなぁ……」
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