59人が本棚に入れています
本棚に追加
もう一度見直さなくては、と反省する。
「暗くて外は見えない、か……」
外を見ようと窓を覗き込んだ時だ。
窓に映し出された人影を見て、一瞬それが誰なのか分からなかった。
窓に映っているのは、長い黒髪の、五、六歳頃の少女。
ふんだんにフリルのあしらわれたワンピースを着た少女は、窓の中でその整った顔をポカンとさせている。
恐る恐る手を動かせば、窓の中の少女も同じように動いた。
つまり、それは。
「嘘……」
--自分自身である事を示している。
色々な可能性、それこそ拉致監禁だとか、誘拐だとかも考えていなかったわけではないのだ。
けれど、これはあまりにも想定外過ぎるというもの。
今日一日でどれだけ驚いたら良いのだろうと、また嘆息する。
(え? 私、死んだ……ってこと?! いや、よくあるやつだとその時の記憶が無いと変じゃないかな。私、死んだ記憶なんて、全くないけども)
思わずといった風に、最近読み漁ったケータイ小説を思い返していた。
それらはどれも死んだ時の記憶は明確にあったように思う。
「……いや、こういう場合もあるのかも?」
少々腑に落ちないが、そうでも無ければこの状況を説明出来ない。
(まあ、目が覚めたら知らない場所、それも森の中の洋館に居て、それでいて姿が変わってるって普通有り得ないものね)
自分が死んだにしてもそうでないにせよ、転生かあるいは誰かの肉体に(精神だけ)入り込んだ。などという摩訶不思議な話の方が、誘拐などの下手に現実的であるがゆえにリアリティのかけらのない話よりは、余程可能性があると思った。
一つ、此処が前の世界と同じなのか、そうじゃないのかという疑問は残るが、明日外に出れば嫌でも分かるのだろう。
そう結論付けて、ふらふらと寝室に向かった。
もう一度寝に入る為に。
最初のコメントを投稿しよう!