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「ごめん、遅れて。」
小走りに駆け寄る男の姿を見つける。白衣という無言の圧力の殻から抜けると意外と普通なんだとホッとした気持ちになる。
私服や見た目から、この人が合法的に人の腹を切ったり、死亡宣告する力を持つ人間だと誰が分かるだろうか。
今ここで、それを知っているのはほぼ私しかいないと思うと、なんだか優越感や独占欲を感じて、とても嬉しかった。
「待ってないよ。」
「ごめん遅れちゃって」
笑うとタレ目になる目は人懐こい印象を人に与える。でもなんとなくこの人が心を許す人は少ないだろうと感じることがある。
「お肉が食べたいって言ってたから、先輩に教えてもらったお店にしようと思ってさ。」
「ふぅーん。」
店はアメリカのバー風で、賑やかな雰囲気を醸し出している。デートなのに意外とうるさめのお店なのねと思ってるうちに碧眼を持つ金髪の外国女性が席まで案内をしてくれる。
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