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子供の頃からずっと、誕生日が嫌だった。
嫌い、というわけではない。誕生日が嫌いな子供はそういない。
夕ご飯の時、食卓に並ぶのは僕の大好きなものばかりだった。皿にはみずみずしいフリルレタスの上に唐揚げが山盛りになっていて、真っ赤なプチトマトが皿の外周に沿って飾られていたし、隣にはゆで卵入りのポテトサラダの皿があった。一人ずつにコーンスープのカップが配膳され、それは粉をお湯で溶いたようなのじゃない、牛乳パックに似たパッケージのそれを鍋に開けて温めるタイプのものだった。
そしてもちろん、僕のお腹がいっぱいになった頃、母は冷蔵庫から真っ白な箱を出してきてくれた。箱を開け、待ちきれない僕の目の前でロウソクに火が灯され、部屋の灯りが落とされる。
「ハッピバースデートゥーユー……」
家族全員での、少しばらばらな歌声に合わせて僕は大きく息を吹きかけ、辺りが一瞬だけ真っ暗になった後、再び部屋を照らす眩(まばゆ)い光の中でにこにこと笑っていた。ケーキははちきれそうだったはずの僕の胃の中へするりと収まっていき、プレゼントは僕の両腕にしっかりと抱えられた。
「誕生日おめでとう」「おめでとう」「おめでとー」
僕はただただ嬉しくて、家族に囲まれて笑っていた。
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