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十一月にもなると、早朝は震える程には寒い。
太陽が早く昇る夏場とは違い、五時半という時間帯はまだ部屋の中は真っ暗なままだ。
そんな寒さと暗闇が混ざり合う空間の中で目を覚まし、エアコンもストーブも点けることなくモソモソとウインドブレーカーへ着替えると、布施 幸子(ふせ さちこ)はまだ就寝中の家族を起こさぬよう忍び足で階段を下り玄関まで向かうい、履き慣れたスニーカーへそっと足を入れた。
「…………」
そのままゆっくりと鍵を外し、外へ出る。
喉と肺を痛めつけるかのようにキンキンと冷えた空気を吸い込みながら道路へと移動し、まだ星の輝く空を見上げて白い息を吐き出す。
中学校に入学してすぐ陸上部へ所属し、それから今日までの五年半。
こうして毎日早朝ランニングをすることが幸子の日課となっていた。
勢力の強い台風や豪雪でも降ったりすればやむを得ず中止にしてきたが、それ以外では高熱でも出ない限り一日もサボることなく続けてきた習慣だった。
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