第一章

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海の近くに架かる大橋の近く。季節を問わず普段からほとんど人が立ち寄ることもなさそうな草むらの中に、無残な姿で捨てられていたらしい他殺体。 詳しい死因等の情報は出回っていないためわからないものの、その死体が三週間くらい前から行方不明になっていた隣町の高校に通う二年生の女子だとは聞いている。 「彩月ちゃんは? 何も言わないの?」 「別に普段通りだよ。興味ないみたい。むしろ、彩月の反応が一番有難く感じるわ。あの子と接する瞬間だけホッとする感じ」 彩月と言うのは、幸子にとって双子の妹である布施 彩月(ふせ さつき)のこと。 約五年前。中学二年生のときにいじめを理由に引きこもってしまい、以来ずっと自分の部屋へ閉じ籠もる生活を続けているらしい。 湖月自身、最後に会ったのは五年前の春だったと記憶している。 双子と言うだけあり、容姿は姉の幸子と瓜二つと言い切れるくらい似通っていて、声すらも区別をつけるのが難しかった。
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