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実の両親ですらひと目で区別をつけるのが難しいらしく、服装や髪型で見分けるようにすることもあるというのだからなかなかのものだ。
「彩月ちゃん、幸子とだけは普通に話しできるんだもんね。心の中じゃ、案外心配してるかもしれないよ?」
「どうかな。結構、そういうとこは無頓着な性格だからね。家の外で起きてることなんてどうでも良いって思ってるんじゃない? 仮に、今日から日本で戦争が始まったとしても、自分と引きこもる家が無事なら騒ぐことも悲観することもなさそうなくらいだし」
ぐぐぅ……っと伸びをしながらそう言うと、幸子は気怠そうにため息を吐いて立ち上がった。
「仕方ない……。帰るかぁ」
今にも欠伸をしそうな間延びした声でぼやき鞄を掴む幸子を、湖月は呆れたように見つめて苦笑する。
「幸子さ、絶対心臓に毛が生えてるよね」
「え? 何で……?」
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