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当然、人の姿はない。
風も吹いてはいないため、目の前に群生する草たちも揺れることもなく黒いシルエットを浮かび上がらせているのみ。
そんな物悲しくもある風景に暫し見入ってから、幸子はガサガサと遠慮のない音を響かせつつ草むらの中へと入り込んでいった。
本来なら、こんな所に寄るつもりはなかった。
しかし、幼少期から好奇心だけは旺盛だった生まれつきの性格が災いし、この先にあるものを覗かずにはいられない衝動が湧き上がってしまった。
幼稚園や小学生の頃には、近所にあった廃屋が気になれば一人でもその日のうちに忍び込んだし、珍しいと思った生き物は微塵の躊躇いもなく素手で掴み持ち帰った。
見てみたい、知りたいと思いそれが自分の力で可能なものは――要は大人の協力が不要な範囲のものは――いくらでも貪欲に追求した。
そういう部分では、すごく積極的で学習意欲の高い子供だったんだなと幸子は自分を振り返ることがあった。
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