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もっとも、そういった癖が今だに抜けないというのも逆に困ったものではあるのだけれど。
それでも、そういう性格なのだから仕方がないかと割り切っているのが現状と言える。
「…………」
暗がりの中、足元に注意しながら奥へと分け入っていくと、不意にどこか近くからほんのりとした異臭が漂ってくることに気がつき幸子は足を止めた。
その匂いが流れてくる方向がどこか、すぐに見当をつけ進む先を修正する。
すぐ近くから響いてくる波の音が、季節外れの納涼効果を発揮し走って温まっていた身体の熱を僅かに奪おうとしていた。
物を見つけるには流石に暗すぎるため、ポケットに入れていたスマホを取り出しライトを点け周囲を照らしながら歩を進める。
異臭は僅かに強くなり、その正体へ自分が近づいているのだと教えてくる。
スンスンと鼻を鳴らしながら更に数メートル進み、目の前の枯れたススキらしきものを左右へ掻き分け――
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