プロローグ

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そこで、幸子は異臭を放つ正体を発見した。 ライトに照らされむごたらしい姿をさらすそれは、全裸の死体だった。 年代は幸子と同じくらい。見た感じだけで判断をするのなら、十五歳から二十歳の間と言ったところか。 ただ、その皮膚は生きた人間のそれとは明らかに違い、どす黒い部分と血が抜けたように青白い部分が入り混じるゾンビのような色合いをしていた。 仰向けに寝かされ、剥き出しになった腹部は妊婦のように不自然に膨らみガスがたまっているのが素人目にも予測ができる。 胸部や頬などの一部は、鳥や野ネズミにでも食されたのか所々腐乱した肉が見えてしまっていた。 ぼんやりと開かれた瞼の奥にある眼球はドブ水のように濁り、髪の毛は打ち捨てられた雑巾を彷彿させるくらいボサボサになっている。 しかし、幸子の目を何よりも引いたのはその死体の頭上。 艶も何もない頭のすぐ上に、切断された手足が綺麗に横一列の状態で並べられていた。
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