その者静かに燃えゆ

5/60
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/1156ページ
都市化の激しい街々に比べたら、自然や緑の色が多く残るノスタルジックな町。 何も無いド田舎ではなく一通りの施設は揃っているが、隣街はかなり近未来化が激しい都会なので、必然的に「田舎」の烙印をテレビで押されてしまった。 テレビは何時だってそんな物だけど、都会からすれば田んぼが在る時点で「田舎」なのかもしれない。果物や野菜は遠方からの取り寄せがあるくらい新鮮で、一味二味も違う。自然の特権だ。 ビル群が存在しないので空の景色は邪魔されずに鑑賞できる。見上げさえすれば夜々に配置された星座がクッキリと拝められるのだから、天体観測や天文学者が時折お邪魔する理由としては十分だろう。 都会と比べたら活気は少ないけど、人口密度も多くは無いけど、この町には奴らが居る。 日が出ている内は大人しいけれど、日が落ちてしまえばその瞬間―― 四月は一番暖かく、過ごしやすい始まりの季節。春風に乗せられ桜は美しく舞う。 爽やか日和の正午過ぎ、この町に在る小さなお店は、物語の主人公が働く職場。 「大変お待たせ致しました、では次にお待ちの方どうぞ。」 動きやすく清涼感があり、滑らかな白いユニフォームを身に着けたスタッフに誘導され、数個設置してあるベッド端に座り込む。 カーテンを閉めてプライベートを守り、お客様である30代OLの骨盤の歪みが如何ほどなのか直に検査。
/1156ページ

最初のコメントを投稿しよう!