第一章 召喚

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 ――辛くないのか。  何時だったか、友達にそんな事を言われた。  俺とよく居る親友は、何をやらせても上等な結果を出す。所謂完璧超人、と呼ばれる人種らしい。  らしい、と言うのは、俺自身全くそう思っていないからだ。  辛い物は苦手だし、ケーキなんかが好きな甘党で、隙あらばベタベタと引っ付いてくる輩だ。  そんなあいつとよく居る俺が比べられている事は、なんと無く感じていた。  ある日、その事を知ったあいつが、酷く悲しそうな顔をしていた。気に入らなかった。  下らない事で悩むなと言っても、聞きやしない。  だから、努力する事にした。  あいつの為か? と親にからかわれた時はむっとしたが、実際その通りだから何も言い返せなかった。そんな俺が面白かったのか、親は馬鹿笑いを決め込んだ。  今では、成績で追い抜き追い抜かれな関係だ。  負ければ悔しい、勝てば嬉しい。それはあいつも同じだった。  だから、辛いかどうかと訊かれれば、答えはNOになる。  妬み、嫉み、僻み。俺には理解出来ない感情だ。  実際、あいつは凄い奴だが、凄い奴なりに、凄い理由がある。  あいつの家は、母子家庭なのだ。
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