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父親はどうしたのか、俺は知らない。あいつが頑なに語ろうとしないのだ。
俺はそれ以上、踏み込もうとは思わなかった。語らないなら、別にいい。あいつが何かを抱えて、辛いを思いをしているならすぐに分かる。
あいつは素直に顔に出るタイプなのだ。
苦労している母親の為に、あいつは努力している。何もせず、なんでも出来る訳じゃない。母親の為に人一倍頑張っているのだ。
そんなあいつに嫉妬しようとは思わない。
寧ろ、嫉妬する側が恵まれている事の方が多い。
だから、
だから、
「帰れないってのはどういう了見だ? エエ?」
見下ろすように凄むと、絹糸の様な金髪を揺らしてびくりと身を震わせる少女。碧眼に涙を溜めて、許しを乞うように見上げてくるが、容赦しない。
勇者召喚、というものらしい。
何時もの様に帰宅している最中、光に包まれたと思ったらここに居た。
後ろには何かの祭壇があり、塔の中なのか筒型に石材が組まれている。
そして前には祈るように膝を付いているお姫様と枢幾卿とか言うおっさん。その後ろには信者らしき人達と鎧姿の輩。
説明を受けた後の反応が、先程の俺である。
そこらの不良より怖いと評判の俺様だぞ? もっとビビるがいい。
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