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朝の交通機関はただでさえ混雑する。時間的に学生からサラリーマンが殆どだが、たまに小さな子を連れた母親や、病院へ行くお年寄りが乗ることもある。
時間的にはまだ15分程しか待っていないと思っていたが、乗客からは文句を言うものが出てきた。
「いつ動くんだ!」
「あのフェンスは何?」
「違う道から行けないのか?」
一人が不満を言うとみんなが言い出す。
ふと視線を感じて後ろを振り返ると、小学生くらいの女の子が高そうな着物を着た日本人形を抱いていた。目が合うと、子供らしからぬ笑みを浮かべて笑っていたので、思わず目をそらしてしまう。
「えー、このバスはこれより先に進むことができません。お降りの方がいらっしゃいましたら、扉を開けます。その後バスは営業所まで戻りますので、停留所で皆さんを降ろしながら進むこととなります」
何故?理由は?
様々な言葉が飛び交う中、バスはUターンをして元来た道を走り出す。
家の近くの停留所で降りる時に後ろを見たが、人形を抱いた女の子は居なかった。降りる時には分かるはずなんだけどと思いながらも、仕方なく自宅へと戻る。
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