寛容の微笑

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朱音は一人一人の部屋を覗いて寝息を聞き、最後には3710号のベッドの横に腰をかがめて寝顔を覗いた。 突然、3710号は眼を開ける。ニュータイプの感覚は人間より鋭い。 「博士、どうかしましたか?」 キョトンとした3710号の瞳は監視カメラのセンサーの僅かな明かりを反射していた。 「あなたを助けたいけど、どうしたらいいのか分からないの」 「助ける?」 3710号は上半身を起こし、朱音を見つめた。 「政府は、明日、あなたたちをF1に送るというのよ」 「そうですか。嬉しい」 「えっ」 3710号の言葉に朱音は言葉を失う。 「私、他人(ひと)の役に立てるのですね」 ニュータイプは放射線下の作業に携わり人類の役に立つことができる貴重な存在だと、常々教師役の職員から教え込まれていたのだ。 「危険な場所なのよ。それでも嬉しいの?」 「ハイ。私、博士のためなら、何でもします」 「ごめんなさいね」 朱音は3710号を抱きしめて嗚咽した。
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