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翌朝、放射性物質除去技術者養成センターの駐車場には1台のバスと数台の黒塗りの車が入った。
車から降りたのは葛原と岩城、公安警察官10名だ。不測の事態に陥ることを恐れた葛原が、岩城と警察を呼んだのだ。
2人の職員が3701号から3710号の10名を連れて現れると、同じような顔をしたニュータイプを始めてみる警察官は驚き、ひそひそと声を交わした。
列の最後にくたびれた顔をした朱音がいた。その精気を失ったような様子に、葛原は安堵する。
「まだ納得してはいないようですな」
付き合いの長い岩城は朱音の気持ちを察していた。
「やはり、私はやってはいけないことをしたのですね」
朱音はバスに乗り込むニュータイプを見送る。
「そんなことを言ったら、彼らがかわいそうだ」
岩城がトランク一つを手にしてタラップに足をかけた3710号の背中を顎で指すと、朱音が走り出し、バスに乗り込んだ。
3710号が通路で振り返る。
「みんな、ありがとう!」朱音の精いっぱいの言葉だ。
「博士、あたたかい。……私なら大丈夫です」
3710号は自らの意思で朱音を抱きしめ、耳元でささやく。頬を朱音の涙が濡らした。
席に座っていたニュータイプの瞳は、3710号の心が感染したように優しく朱音を見ていた。
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