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気が付くと、杉山が神谷部長の手を握り泣き崩れている。
杉山は情に厚く、部下の信頼も得ている。上司としての立場を覆されてしまうほどのカリスマ性だ。ここでもポイントを稼ぎたいのか? 負ける訳にはいかない。
俺は杉山の震える肩を抱き、釘を刺すべく優しい上司を演じた。
「泣くな、杉山。そんな姿を見て、神谷部長が喜ぶと思っているのか? ここは毅然とした態度で、心配を掛けない様に……ん?」
杉山の様子が変だ。俺が話し掛けても反応せず、左手は神谷部長の手を握り締めているのに、右手は枕元で震えている。その右手の先には……
……
……
ポニーテールだとっ!?
これは誰だ!? 神谷部長なのか? カリスマ性が出まくりだろ! 頭のてっぺんからサイドに優しく流れる髪は、遊びが過ぎるだろう!
いや、よく見るんだ。神谷部長の頭皮は薄く、ポニーテールの部分だけ不自然なほどツヤツヤした黒髪だ。という事は、カツラか?
だが、なんでポニーテールなんだ! 他にも選択肢はあっただろう!? 髪を遊ばせるなんてレベルじゃないぞ!
……
……
「グフッ!」
ヤバイ! 笑いが感染した! 杉山は泣いてたんじゃなくて、笑いを堪えてやがった。このままでは、俺まで同罪……いや、俺だけ笑ったままと言う最悪な事態も考えられる。杉山は俺を陥れようとしているのか!?
神谷部長! 今こそ目を覚まし、この不謹慎な笑いを感動の笑顔に変えてくれ!
混乱する姿を見て、最後の砦の宍戸部長が動き始める。
そしてカツラも、最終進化を遂げようとしていた。
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