表~猿の手スマホ

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「落としましたよ」 「えっ?」  彼女は反射的に、差し出されたスマートフォンを受け取った。  足早に立ち去るスーツ姿の男の背をチラッと見て、彼女は手元に視線を落とす。 「あ……」  ソレは彼女のものではなかった。  厚みといい大きさといい、サイズが彼女のと同じぐらいだったから手にした時に違和感がなかっただけで、目で見てみれば似ても似つかぬ別物だった。  慌てて顔を上げ今の男の姿を捜したが、もう都会の雑踏にまぎれてわからなくなってしまっていた。  彼女は困った顔でソレを見る。  ひどく傷だらけで汚れたスマートフォン。どこのメーカーのものかもはっきりしない。 「どうしよう?」
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