かんせん

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 おとうさんのことを思いだしていたその時、おとうさんにそっくりな大きなせなかを見つけました。 「おとうさん!!」  女の子は泣きながら、白衣のすそを掴みました。 「あ?」  ふり返ったら、そこにいたのはおとうさんとよくにている顔をしたお医者さんがいました。 「おとうさん!!」  女の子は、おとうさんによくにたお医者さんにだきついて泣き出しました。  これに、お医者さんはこまってしまいます。 「オレはオマエのおとうさんじゃない。あっち行け」  お医者さんは、女の子に冷たくしました。  けれど、女の子はだきついたまま首をふります。 「私、かんせんびょうなの!!」  これを聞いたお医者さんは、少しだけかおいろを変えました。 「おとうさんもおかあさんも、同じびょうきでしんじゃった。私、今ひとりぼっちなんだよ」 「……だからどうした!!」  お医者さんの言葉はあまりにも冷めていました。  けれど、女の子はめげませんでした。 「おとうさんといっしょにいたい!!」 「……はぁ?」  お医者さんは、怒ったかおつきで言いました。 「コラ、小さい子になんて言い方するんですか!」 「いててっ!」  すると、お医者さんの後ろからナースのおばさんがやって来て、お医者さんの頭をたたきました。 「そんな冷たいあなたには、女の子の担当を任せるの刑です!」 「なにーっ!?」  お医者さんが言いかえそうとしましたが、ナースのおばさんの大きな手が口をふさいでしまいます。  そして、 「これは、私の方から上の者に言っておきます」 と言って、ナースのおばさんはいなくなってしまいました。
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