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☆
昼休みという時間は、通常、教室の出入りの激しい時間で、教室内にクラスメイト全員が揃っていることは、実はあまりない。
だが桧山が動くなと言ったとき、奇跡的にクラスメイト全員が教室の中に揃っていた。
……いや、それを見計らって、桧山は動くなと言ったのか――。
桧山が始めたゲームのせいで、教室の入り口前から動くに動けなくなった僕は、手持ち無沙汰だったと言うわけではないが、取りあえずできることもなく、ゆえにそんなことを考えることに時間を費やした。しかしそれでも、まだまだ時間はありそうだった。
桧山のゲームは、高校生がやるものとして適当とは思えない、低能と呼ぶに然るべきもので、ゲームのプレイヤーはクラスメイト全員。
と言っても、全員が一斉に始めるわけでない。ゲームは始めたある一人から、次々に別の人間に伝わっていく、言うなら感染方式で広がり、その感染はクラスの全員に広がるまで終わらない。
桧山はそのことを説明すると、自らゲームの口火を切った。つまり、大元の感染源となったのだ。
桧山はゲームを始めてから少しすると唐突に、目の前にいたやつを指差した。そいつは桧山の取り巻きの一人で、真壁(まかべ)と言った。
桧山の指差しは、イコール次のプレイヤーの指名。新たなプレイヤーとなった真壁は、ゲームを始めて少しすると、桧山がしたのと同じように、隣にいた品川(しながわ)を指差した。これで品川が真壁の次のプレイヤーになったわけだ。ちなみにこの品川も桧山の取り巻きの一人だ。
その品川もまた、前の二人と同じことをした。ゲームを始めて少しすると、隣にいた、やはり桧山の取り巻きの一人の中西(なかにし)を指差し、そうやってゲームを感染させる。
同じことが何度か繰り返され、桧山の取り巻き全員にゲームが感染し終えると、次に、カースト的に中間層に属するやつらへと感染は広がっていった。
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