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取り巻きたちのように桧山にこびへつらうわけではないが、しかしだからと言って、桧山に逆らうこともできないそいつらは、桧山やその取り巻きたちのように指差すのではなく、目配せによって近くの人間にゲームを感染させた。そうしてそいつらの間でも、ゲームはまったく滞ることなく進んでいった。
……いや。滞らせてはダメなのだ。滞らせたら、その時点でゲームオーバー。
必ず、ある一定のリズムで進んでいかなければならない――桧山のゲームはそういうものだったから。
中間層全員に感染が広がると、次にゲームは僕も含む下層へと感染し始めた。
下層においても、感染のさせ方は中間層と同じ、目配せだった。だが、中間層よりも目配せは控えめで、感染する相手を見る目は窺うようだ。
一人、また一人と、下層の人間たちも感染していくのを見ながら、いつ自分に感染してくるものかと、僕は内心怯えていた。別に感染したところで体に支障が出るわけでもないので、怯えるのはそういうことを心配してではなく、感染後、もしゲームを滞らせるような真似をしたらどうなるかと考えしまい、その想像に怯えたのだ。
そしてとうとう、僕に感染するときが来た。教室の隅の入り口前という場所が悪かったのか、僕が最後の感染者だった。プレッシャーが半端なかった。
僕の前の感染者――クラスの中で一番仲がいい中嶋(なかじま)からの目配せを受けた僕は、ごくりと唾を飲み込みたい衝動を必死に堪えて(だって、唾を飲み込んだらリズムを崩してしまうから)、それまでの感染者同様、口を開き声を出した。
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