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学校に着けば、教室に入って席に座り、ただただ外を見上げる。
程なくして先生が来てHRが始まり、そして、授業も始まる。
私は、何事もなくその時間を過ごし、昼休みには、なぜかやって来る千絵と昼食をとって、授業をこなす。
そして、放課後。
ここからが、私の一番好きな時間。
学校の屋上で、手すりに両腕を置いて、グランドを見下ろす。
「……人がごみのようだ」
いや、ごみというのは間違っていない。
だが、どちらかというと、アリかな。
群れて。群れて群れて。助け合いと称しながらも、サボる。
周りは、サボりを咎めつつも、それを容認する節がある。
サボりを無くすためにペナルティがあるわけではない。
サボった人にペナルティを与え、見せしめにしてるのだ。
見せしめにすることによって、周りに注意を促すためではない。
見せしめにして、反発させ、サボらせる。
こうすることによって、普段からあまりしっかりしていない人でも、自分は頑張ろうなどと思ったりするわけ。
まさに、アリ。
私は、そんなアリのいるグランドから視線をはずし、空を見る。
ここからなら、日が沈むのも見ることができるのだ。
私は、ここで日が沈んでいくのを見るのが好きだ。夕日が好きだ。
見ているだけで、なぜか心が温まる気がする。
だが、そんな私の平穏も、夜に差し掛かる頃合に終わりを告げる。
下校時間。
私は、手すりからどいて、屋上の扉を開けた。
昇降口で靴を履き替えて、正門を出る。
そこで、いつものように後ろから声をかけられた。
「あ、松浦」
振り返ると、私が見下ろしていたグランドで練習していたらしい、クラスの男子、中田栄治(なかたえいじ)。
「何?」
ツンツンした茶髪の中田は、泥だらけの青い服と白の短パン、青いソックスを穿いていて、サッカーをしていることが伺える。
そんな中田は、ここ最近、私が帰るのを見かけると話しかけてくる。
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