一、付き合うことに

2/6
前へ
/45ページ
次へ
翌日、放課後に屋上へ来てみだが、まだ千絵はいなかった。 私はいつものように、部活動に励んでいる生徒達を見下ろす。 そうしているうちに、日が傾き始め、夕暮れに染まり始める。 そこでようやく、屋上の扉が開く音が聞こえた。 「空ー、ごめんねー。委員会が長引いちゃってさ」 頭をかきながらそう言って、千絵は私に近づいてくる。 「気にしてないよ。それで、用件って?」 早速私は本題に入る。 だが、千絵は私の問いを無視して、私の隣に立つ。 そして、先ほどまで私がしていたように、グラウンドを見下ろし始めた。 「はははー! 見ろ! 人がごみのようだ!」 テンションを高くして、どこかのアニメ映画のような台詞を言う。 私は、そのテンションについていけず、呆然とその横顔を見ていた。 「……よし」 待っていると、千絵はどこか思いつめた顔になり、空を仰いで、ポツリと意気込み、私と向かい合うように身体を傾けた。 真っ直ぐと私を見ていて、思わずたじろぎそうになる。 気おされそうになりながら、私は千絵と向き合った。 「松浦空さん」 急に、他人行儀のように私の名を呼ぶ千絵。 私は、千絵の真剣な顔を見つめ返しながら、次の台詞を待った。 「私は、貴女が好きです」 きっぱりと、そう言った。 どこか、告白のように聞こえるその台詞。 だが、どう考えてもありえない。 なぜなら、私は女で、彼女もまた女。 つまり、女同士だ。 なのに、千絵が愛の告白をしているというのはおかしいのだ。 となれば、友達としての好きとなる。 ラブではなくライク。 だが、それもおかしいというものだ。 わざわざこんなところに呼び出していう事でもない。 そもそも、私はどっちの理由で好きといわれたとしても、「あ、そう」で終わらせてしまうだろう。 事実、私はそう言って流そうとしていた。だが、
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加