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彼女は最近転校生してきたのだろうか? まさかこの学校の制服を着て忍び込んできた? だとしてもなんのために? 僕はものすごい早さで妄想を巡らせた。
「ごめんなさい」
彼女が言った。
「こ、こちらこそ」
とっさに返事をしたが、彼女がなぜ謝ったのかよくわからない。でも、こんな美少女に謝られるとこっちの方が申し訳ない気持ちになる。
「ごめんなさい。あなたの名前を思い出せなくて」
「あの、あなたとは会ったことはないと思います」
「そうだった?」
「はい」
彼女は何かを思い出そうとしているのか、手を額にやってうんうん唸っていた。
「じゃあ、きっとそうですね。初めまして、よろしくお願いします」
彼女は丁寧にお辞儀をした。その仕草はどこか不自然だった。形だけで心がこもってないということではないんだけど、あまりに機械的というのだろうか。
「でも、あなたはなぜ夜の学校にいるの?」
彼女に聞かれて、僕は焦った。
「僕は家に帰るところです。補習がさっき終わって」
僕はそう答えたが、それは嘘だった。こんな遅い時間まで補習なんかやってるはずがなかった。もっとましな嘘をつけば良かったと、すぐに後悔した。
だけど、彼女はそれに納得したようだった。もしかして、本当に彼女は転校してきたばかりで、この学校のことをよく知らないのかもしれない。
「そうだ、友達が待っているんです」
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