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彼女が言った。
「友達? こんな時間に?」
「髪の長さはこのくらいです。背はこのくらいで・・・・・・」
質問とは関係のない答えを返してきた。それも面食らったが、それより彼女が話す友達の容姿に僕は動揺した。
僕はその子を知っている。いや、むしろなぜこの少女は彼女の事を知っている? この目の前の見知らぬ少女は他に何を知っているんだ・・・・・・。
「私もう行かないと」
そう言って彼女は暗い廊下の奥を見た。僕はそこに誰かいるようには見えなかった。
「また明日」
彼女は僕の返事を待つことなく、廊下の奥へと走っていった。暗闇の中を軽快に走り去る彼女の後ろ姿を見送りながら、しまったと僕は思った。挨拶は交わせたのに、彼女の名前を聞いてなかった。また明日会えるだろう。あんなかわいい子だから、探せばすぐに見つかる気がした。
僕は開きっぱなしの窓を閉めて玄関に向かおうとした。そこで、備品置き場のドアに鍵をかけていない事を思い出した。
いけない、いけない。彼女に見とれてとんでもない失敗をするところだった。でも、それくらい彼女は綺麗な子だった。僕はドアに鍵をかけると、ノブを回して開かないこと確認すると、暗い廊下を歩きだした。
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